PRINCESS KNIGHT プロローグ



 そこはどこまでも広がる白い雲の上。シミひとつないと思われた純白の世界の一点に突如として暗雲が広がり、雷鳴が響き渡った。
「うぁぁぁっーーーーーーーー!!」
断末魔の悲鳴と共に地上へと『それ』は落ちていった。


「堕ちたか…」
「ええ…あの者は一体どうなるのでしょう?」
「おそらく数百年は地上を彷徨うであろうな…」
ここで別の声が問う。
「ところであの赤ん坊はどうにかならないのでしょうか?」
「無理だ…一度飲ませた魂を取り出すことなど…」
「では、このまま地上に…?」
「仕方なかろう…全ては私の責任だな…」
「そんなっ!」
「…せめてこの子には私が与えうる最大限の加護を与えよう…」
「それでこの子は安寧に生きられるのですか?」
「わからぬ…運命とは自ら切り開いていくものだ。その行方がどうなるかは神たる私でもわからぬ…」
そして、その『神』と称する声の主は力なく地上を見下ろすばかりであった…。


この日シルバーランド国王夫妻のあいだに一人の赤ん坊が生まれた。これはこの過酷な運命を背負った一人の少女をめぐる魂の物語である。