PRINCESS NIGHT 第一章

さていよいよ本編開始です。


…て、以前当ブログに途中まで公開したものの焼き直しですがw あ、あと今日の画像が劇中にも出てくるマルメロの花です。なぜマルメロかと言うと…もうお分かりですよねw ではでは今夜からPRINCESSKNIGHT第一章開幕でございます↓↓(手抜き更新万歳(コラw






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  柔らかな日差しが降り注ぎ、木々はその葉を広げ、花々が咲き誇っている。そこはシルバーランド王家専用の庭園であった。そこに鳥たちの囀りに交じって、わが子を呼ぶ声が響く。

サファイア、どこにいるの?サファイア…」
  声の主はシルバーランド王妃、マルシアであった。気高く、慈愛を持った王妃は国母
としてシルバーランド国民からも尊敬の眼差しをもって慕われていた。

「お母様、こちらです」
  すると、広大な庭園の中ほどにある花畑の中から少女の声があがる。立ち上がった少女は両手に摘み取った花々を抱え、嬉しそうに微笑んでいた。その身に纏った美しいドレスとその幼い少女のような屈託のない笑顔の落差に王妃は微笑を浮かべつつ、歩み寄っていく。

「まぁ、サファイア。せっかくのドレスが汚れてしまうわよ」
「あ…ごめんなさい、お母様…」
  バツの悪そうな顔をしながらも、悪戯っぽく笑う仕草に愛おしさを感じながら王妃はわが子、サファイアの手元の花に目をやった。

「花を摘んでいたのね…あら、その花は…」
  ふと、サファイアの右手に携えられた薄桃色の花を認めると、王妃は目を細めた。

「このお花、とってもキレイでしたから。お母様、何か…?」
不思議そうに問うサファイアに対して王妃はゆっくりと語りかける。

「この花はマルメロと言って、とても可愛い実をつけるの。あなたの誕生花なのよ」
「そうなのですか?!知らなかった。」
「あなたが生まれてすぐに植えたのだけど、もうこんなに増えたのね…」
  そう言いながら王妃はサファイアが生まれてからの年月を思った。草花と同じくすくすくと育つわが子の成長は親ならば嬉しくないはずがないが、この子のこれまでの、そしてこれからの人生を思うと、決して心から喜べるものではなかった。

「…お母様?どうなさったの?」
「えっ?…何でもないのよ」
  呼ばれて、初めて自分が思いつめた表情で黙りこくっていたことに気づいた王妃はやや慌てながら応じた。

「そうですか。ところでお母様、このマルメロの花言葉は何ておっしゃるの?」
「ああ、この花の花言葉は『魅力』あとは『誘惑』だったかしらね」
「えぇー、最初の方は良いけど『誘惑』ってなんだかイヤ…」
  不満気な表情をその愛らしい顔に浮かべるサファイアに対して、王妃はゆっくりと応じる。

「ふふっ、それだけあなたには人を惹きつける力があるということじゃないかしら」
「そうでしょうか…?だったら良いかな♪」
  そう言ってまた嬉しげに自身の誕生花を見つめるサファイアを見やりながら王妃は思う。
  

  −そう、本当にこの子は人を惹きつけてやまない魅力に溢れている。王族として、人の上に立つものとしてそれは何よりも重要なことなのだ。しかし、 それならばなぜ『神』はこの子にこのような過酷な運命を与えたのであろうか…。
  

  ともすれば、すぐにこのように沈んだ気持ちになってしまう我が身を奮い立たせるように、王妃は我が子に声をかけた。

「そうだわ、サファイア。あなたその花でブーケを作ったらどう?」
「ブーケですか?でも、私作り方を存じ上げませんわ…」
「もちろん、教えて差し上げますよ。でも、これではまだ花が少し足りないようね…」
「では、私また摘んできます!」
  そう叫ぶと、また花畑へと向かって駆け出していく我が子の後姿を見つめながら、王妃は思わずにはいられなかった。



  −やはり、ああして嬉しそうに花を摘んでいるあの子は私の娘なのだ。あんな可憐で可愛い姫が他にどこにいるだろう。



しかし、サファイアが『姫』でいられるのは最早シルバーランドにおいて、この庭園の中だけなのであった。